「本草綱目(ほんぞうこうもく)」に記され田七人参の効能
草とは、薬の本となる草、すなわち薬草のことで、転じて、薬物となる鉱物、鳥獣、虫魚、亀貝などの動植鉱物を総称したものをいいます。この本草学の最高の古典が本草綱目で、明の時代に李時珍が、土・玉・石・草木・禽獣・虫魚など1,892種を釈明・集解・弁疑・正語・気味・発明・附方の八項にわたって解説したもので、30数年の多くを費やして著作しました。彼は、字を東壁、号を瀕湖といい、湖北キ州(今のキ春県)の人で、中国明代の第一の革新思想家で、偉大な医薬学者です。全52巻、1590年の刊行です。 本草学は、わが国には平安時代に伝来し、その研究は江戸時代にもっとも盛んでありましたが、とくに小野蘭山が本草綱目について口授した本草記聞を、孫や門人が整理して出版した「本草綱目啓蒙」(48巻、享和3年刊)。また、岩崎灌園の「本草図譜」(96巻、文政13年刊)などが著名です。 「本草綱目」はこれら本草学研究の最高峰に位するわけですが、草部題12巻、37綱目で、次のように述べています。
本草綱目
本草綱目
山漆(綱目)金不換 時珍曰く、彼の地の者は、葉が左に三枚、右に四枚あるから三七と名けるのだというが、恐らくはそうではあるまい。或いは本名は山漆というので、そのものがよく金瘡を合することが漆のものを粘着するようだという意味だともいう。このセツのほうが首肯すべきに近い。金不換というのは貴重なるものという名称である。
集会
時珍曰く、広西、南丹諸州の番?の探山中に生じ、根を採って暴乾する。黄黒色のかたまり付いたもので、形状はほぼ白及に似て、長きものはふるい乾地黄のようで節があり、味は少し甘く苦く、頗る人参の味に似ている。或いは未を猪血の中へふって見て、血が化して水となるものならば眞物だともいう。近頃中国にいった一種の草に、春苗が生えて夏三四尺の高さになり、葉は菊がいに似てこわく厚く、岐尖があり、茎には赤い稜角があり、夏、秋に黄色の花を開いて、芯は金糸の盤紐のようで可愛く、香気はない。乾けば苦はいのいとのような糸を吐き、根、葉の味は甘く、金瘡、折傷の出血、及び上、下の血病を直するに甚だ有効なものがある。これを三七さというのだが、しかしこの草は根の太さが牛蒡の根ほどあって南方から来るのと類似していない。恐らくは劉寄奴の属のものらしい。甚だ繁殖し易いものだ。
根
気味【甘く微し苦く、温にして毒なし】
主治【血を止め、血を散じ。痛を鎮める。金属の刃物、箭の傷、跌撲、枝瘡の出血の止まぬには、かみただらして塗り、或いは末にしてふればその血は直ちに止まる。また吐血、ぢく血、下血、血痢、崩中、經水不止、産後の惡血不下、血運、血痛、赤目、よう種、虎咬む、蛇傷の諸病にも主効がある】
發明
時珍曰く、この薬は近頃始めて世に現れたもので、南方番地の者は戦場で金瘡の要薬として用い、奇数があるという。また、凡そ杖刑で撲たれた傷損のお血が淋漓と流れるには、その場でかみ爛しておおへば、直ちに止り、青く腫れたものは直ちに消散する。杖刑を受ける前に豫め一二銭服すれば血が衝心しない。杖を受けた後には必ず服ますべきものだ。産後に服しても効果をあげるという。一體この薬は気は温であり、味は甘く微し苦いもので、陽明、厥陰の血分の薬なのだから、能く一切の血病を治することは麒麟竭、紫こうと同様である。
附方
【吐血、衄血】山漆一銭を自ら嚼んで米湯でてん下する。或いは五分を八核湯に加える。【赤痢、血痢】三七三銭を研末して米?水で調べて服すれば直ちに癒える。【大腸下血】三七を研末して一二銭を淡白酒で調べて服す。三服位で癒える。五分を四物湯に入れて用いるもよし。【婦人の血崩】方は上に同じ。【産後の多血】山漆を研末して一銭を米湯で服す。【男子、婦人の赤眼】十分重きものには、山漆根の磨汁を四圍に塗るのが甚だ妙である。【無名よう腫】疼痛の止まぬには、山漆を磨って米醋で調べて塗れば直ちに散ずる。己に破れたるものには、研末を乾して塗る。【虎、蛇の咬傷】山漆を研末して三銭を米飲で服し、同時に噛んで塗る。
葉
主治【折傷、跌撲の出血につければ直ちに止る。青腫は一夜経過すれば散る。その他の功用は根と同様である。】

李時珍

本草綱目

山漆(三七)綱目

山漆
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